秋鹿郡 山野河川海岸通道

2021年2月10日水曜日

秋鹿郡 出雲国風土記 出雲市 出雲神話 松江市

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秋鹿郡 山野河川海岸通道

佐陀川にかかる佐太橋

出雲国風土記 秋鹿郡 山野河川海岸通道

神名火(かむなび)山。(ぐうけ)東北九里四十なり。高二百三十(めぐ)一十四里あり。はゆる佐太大神(さだのおほかみ)は、卽ち()(ふもと)なり。

足日(たるひ)山。郡家(ぐうけ)正北(まきた)七里なり。高一百七十丈(めぐり)一十里二百歩あり

女心高野(めごころたかぬ)。郡家正西(まにし)一十里二十なり。高一百八十丈六里あり土體(つち)(ゆた)かに()えて、百姓(たみ)膏腴(うるほひ)(その)なり樹林(はやし)なし(ただ)上頭(みね)樹林(はやし)あり()なり

都勢野(つせぬ)郡家の正西一十里二十なり。高一百一十丈五里あり樹林(はやし)なし。(みね)(さは)あり。周五十歩あり(よも)(みぎは)に、(をぎ)(あし)()(しげ)()ひ、或るは(むらが)(そばだ)ち、或るは水にせり。鴛鴦(をし)めり。

(いま)山。郡家の正西一十里二十七里あり

凡そ、諸の山野に在る所の草木は、白朮(をけら)獨活(うど)女靑(かはねぐさ)苦參(くらら)貝母(ははくり)牡丹(ふかみぐさ)連翹(いたちぐさ)伏令(まつほど)藍漆(やまあゐ)女委(ゑみくさ)細辛(みらのねぐさ)蜀椒(なるはじかみ)薯預(やまついも)白歛(やまかがみ)芍藥(えびすぐすり)百部根(ほとづら)薇蕨(わらび)薺頭蒿(おはぎ)(すもも)・赤桐白桐(きり)(しひ)椿・楠(かへ)(つき)禽獸にはち、(わし)晨風(はやぶさ)山雞(やまどり)(きざし)鹿飛鼺(むささび)獼猴(さる)あり

佐太(さだ)川。源つあり 東の水源(みなもと)嶋根郡のいはゆる多久川是なり。西水源秋鹿郡渡村(わたりのむら)より出づ 二つの水合ひて南に流れて佐太水海(さだのみづうみ)に入る卽ち水海(めぐ)七里あり鮒あり。 水海は入海に通ひ、(みなと)一百五十歩一十歩あり

山田(やまだ)川。源郡家(ぐうけ)西北七里なる湯火(ゆひ)山より出で、れて入海に入る。

多太(ただ)川。源は郡家の正西(まにし)一十里なる女心高野(めごころたかぬ)より出で、南に流れて入海に入る。

大野(おほぬ)川。源は郡家の正西一十三里なる磐門(いはと)より出で、南に流れて入海に入る。

草野(かやぬ)川。源は郡家の正西一十四里。大繼(おほつぎ)より出で、南に流れて入海に入る。

伊農(いぬ)川。源は郡家の正西一十六里。伊農山より出で、南に流れて入海に入る。

長江(ながえ)川。源は郡家(ぐうけ)東北九里四十なる神名火(かむなび)より出で、南に流れて入海に入る。 以上七つの川は、並びに魚なし。

惠曇陂(ゑとものつつみ) (もと)惠伴なるを、惠曇に改めて(まを) (めぐ)六里あり。鴛鴦(をし)(たかべ)あり四邊(めぐり)(あし)(まこも)(すげ)()へり。養老元年より以往(さき)には、荷蕖(はちす)自然(おのづから)(むらがり)()ふること太多(さは)なりしも、二年より以降(このかた)自然(おのづから)()せき()べて(くき)なし俗人(くにびと)へらく、陶器(すゑのもの)(みか)(しきかはら)(たぐい)(さは)あり。古より時々人溺。深きを知らず

深田(ふかだ)池。(めぐ)二百三十あり 鴛鴦(おし)(たかべ)あり

杜原(もりはら)池。周一里二百歩あり

峰峙(みねじ)池。周一里あり

佐久羅(さくら)。周一里一百歩あり 鴛鴦あり。

南は入海にして、春には則ち鯔魚(なよし)須受枳(すずき)鎭仁(ちに)鰝鰕(えび)さき(くさぐさ)あり。秋には白鵠(くぐひ)鴻雁(かり)(たかべ)鴨等あり。北大海なり

惠曇(ゑとも)濱。廣二里一百八十歩あり(ひむがし)(みなみ)びにあり。西()大海(おほうみ)なり卽ちより在家(さと)に至るまでの四方(よも)(なら)びに石木(いはき)なく、白沙(しらすな)(つも)れるがごとし。大風は、(いさご)、或るは(まにま)のごとく()り、或るは()ながられ、(あり)のごとくりて、桑麻掩覆(おほ)ふ。()(うが)てる磐壁(いはかべ)二所あり 一所は厚さ三丈、廣さ一丈、高さ八尺あり。一所は厚さ二丈二尺、廣さ一丈、高さ一丈あり。其の中を通れる川、北に流れて大海に入る。川の東は嶋根郡なり。西は秋鹿郡の内なり。川の口より南の(かた)(ほとり)に至るまでの一百八十歩一丈五尺あり。源なり。上()はゆる佐太(さだ)西は、じきなり。凡そ、渡村(わたりのむら)は、とに(わか)るるなり。古老へらく嶋根郡大領(かみ)社部臣訓麻呂(こそべのおみくにまろ)(おや)波蘇(はそ)(たち)稻田(こみ)に依りて()()りたる所なり。浦西(いそ)より起きて、楯縫郡のなる自毛埼(しものさき)(いた)壁峙(そばだ)ちて崔嵬(さが)しく、風靜かなりと雖も、往來(ゆきき)停泊()つる(ところ)なし。(しろ)嶋。 紫苔菜(のり)生へり

()嶋。高六丈(めぐ)八十歩なり松三株あり。

都於(つお)嶋。 礒なり。

著穗(つきほ)嶋。海藻()生へり

凡そ、北の海に在る所の雜の物は、(ふぐ)沙魚(さめ)佐波(さば)烏賊(いか)鮑魚(あはび)(さざえ)貽貝(いがひ)(うむぎ)甲蠃(かせ)石華()蠣子(かき)海藻()海松(みる)紫菜(のり)凝海菜(こるもは)なり。

通道(かよひぢ)嶋根郡なる佐太(さだ)に通ふは、八里二百歩なり。楯縫郡なる伊農(いぬ)に通ふは、一十五里一百なり

     郡司 主帳 外從八位下 勳十二等 日下部臣(くさかべのおみ)

      大領   外正八位下 勳十二等 刑部臣(あさかべのおみ)

      権任少領 外從八位下      蝮部臣(たぢひべのおみ)

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